私がカピバラを知ったのは、今から20年ぐらい前。友人とシンガポール動物園に行き、夜行性の動物をバスの中から見るナイトサファリに参加した時である。そのナイトサファリで最後に見た動物がカピバラだった。辺りが暗い中、お座りしているカピバラの大きな背中を見て、あまりの身体の大きさに度肝を抜かれた。カピバラの顔はよく見えなかった。

私は鼠が苦手である。子供の頃、住んでいた横浜の家では、鼠や蛇がよく出た。

鼠取りにかかった鼠は、水を張ったポリバケツに鎮めて水没死させ、空き地に埋めた。鼠に家を占拠されないためだった。しかし、水の中でもがいて息絶えていく鼠を見ては、胸が痛んだ。その記憶が今も鮮明。だから、私は、大人になってまで、鼠には会いたくないのだ。にもかかわらず、私は、鼠によく遭遇する。早朝や深夜の道路、地下鉄の通路、以前バイトをしていたバーガーショップ、居酒屋の座布団の下、極めつけは、都内の繁華街にある小料理屋。小料理屋のまな板の上に巨大鼠が降りて留まっていたところをみてしまった。おかみさんは客にお酌していたので、まな板の上の鼠を知るよしもなかったが、私は見てしまった。鼠の目と目があってしまったのだ。鼠がまな板の上に止まっていたのは数秒のことだったが、とても長い時間に感じた。私は、ビールだけ飲んで、何も食べずに店を後にした。

脱線したが、そんな経験も相まって、私は、鼠が苦手。愛らしい顔のハムスターも、人気者のミッキーマウスも、あまり好きになれない。だから、鼠科のカピバラの後ろ姿を初めて見たとき、恐ろしい巨大鼠に遭遇してしまった印象を持った。

しかしだ。その後、日本の動物園で、昼間、水に浸かってくつろいでいるカピバラに遭遇し、カピバラに対する印象ががらりと変わった。私の目には、カピバラが、ほのぼの、のほほん、癒しオーラ全開の、気の優しい動物にうつったから・・・。ひょうきんな顔とぷっくりした身体も愛らしい。カピバラは幸せの、そして、平和の象徴、私、カピバラだったら大丈夫だ...。 

しかしである。(え、また、しかし?)

私が平和の象徴だと思っていたカピバラに闘争本能があることを知ってしまった。カピバラがカピバラに喧嘩をふっかけて、喧嘩相手のカピバラを殺してしまったというネット記事をみてのことだ。衝撃だった。カピバラのオスは、大人になると、縄張り意識が強くなり、時に凶暴になるらしい。

「人は見かけによらぬもの」とよく言うが、カピバラも、みかけによらないものだ。

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