1991年アメリカ映画。ヘンリー(ハリソン・フォード)は、凄腕弁護士として名を馳せていたが、大手病院のクライアントを勝訴させるためには、不利な証拠を握りつぶす、狡猾冷酷な弁護士だった。仕事を理由に家庭を顧みないため、夫婦関係は冷え切り、一人娘との関係もうまくいかない。家でも仕事ばかりしているので仕事一辺倒なのかとおもいきや、週2回は、リッツカールトンで愛人との逢瀬を重ねていた。
ある日、ヘンリーは、強盗事件に巻き込まれ、重傷を負い、歩くこと、しゃべること、さらには、過去の記憶を全て失ってしまう。運動能力も思考能力も言語能力ももたない幼児脳に戻ってしまったのだ。しかし、リハビリトレーナーのブラッドレー(ビル・ナン)の患者に寄り添ったアプローチが功を奏し、ヘンリーは退院できるまでに回復する。ブラッドレーが、ヘンリーに教えたのは、歩き方やしゃべり方だけではなかった。
ブラッドレーがヘンリーに、「過去の栄光を取り戻すことが一番の幸せではないこと。過去と別の人生を歩む中で幸せを見出すことができること」を、自分の人生になぞられて伝えるシーンがある。そこがこの映画の教訓だ。
そして、ヘンリーは非情だった過去の自分と断絶し、家族との満ち足りた時間を大切にする温情な人間に変わっていく。
ヘンリーの事故は災難だったが、それがきっかけで、ヘンリーがいやなやつを卒業できて本当によかったと思える映画だった。
金銭的に裕福で社会的なステータスがあることが幸せの全てではない、幼児脳から人生をやりなおすことになった人間が、幸福とは何かを教えてくれる。ハリソンフォードの演技の幅を楽しめる映画でもある。