この小さな齧歯(げっぱ)目リス科動物に初めて会ったのは上野動物園。同じ格好をして整列してこっちを見てる。なんだか可愛い。
動物の名前はプレーリードック。動物園に住んでいる哺乳類の中でも、トップ10にはいるひときわ小さな哺乳類である。危険が迫ると、犬のように、キャン、キャンと鳴き声を発し、仲間に伝える事から、プレーリー(北米の草原)のドック(犬)と名付けられた。
プレーリードックが人気の理由はいくつかある。指先で餌をもって食べる、人間のように抱き合きあう。口と口でキスをする。鼻をくっつけ合う。互いに毛づくろいする。餌を分け与えあうなど、まるで、ピーターラビットのよう。所作がとてもかわいらしいのである。
プレーリードックは、一夫多妻制で、オス1匹と数匹のメス、そして、その子どもたちから成るコテリーと呼ばれる家族集団で暮らす。巣穴には、寝室、子供部屋、餌の貯蔵庫、トイレなど、用途別に別々に部屋がある。巣穴の出口付近には、外敵の動きを見張るための見張り所があり、見張り役のプレーリードックがはりついている。
プレーリードックは、かわいいだけではなく、賢い動物でもあるのだ。
プレーリードックの寿命は、野生の場合、3~5年、飼育下では、7~8年。繁殖期は冬場(1月〜3月)。11月くらいから発情が始まり、1月くらいに交尾、30-35日の妊娠期間を経て、2月くらいに出産、赤ちゃんは毛のない赤裸で生まれ、1か月から1か月半前後、巣穴の中で成長し、4月くらいに巣穴から顔を出す。
プレーリードッグの種類は、オグロプレーリードッグ、ガニソンプレーリードッグ、メキシコプレーリードッグ、オジロプレーリードッグ、ユタプレーリードッグの5種類。種類は、生息域により異なる。5種類の中でもっとも数が多いのが、尻尾の一部が黒いオグロプレーリードッグ。彼らは、1.3平方キロの巣穴にタウンと呼ばれる数百匹からなるコミュニティーを作って暮らす。過去、テキサスには、4億匹ものプレーリードックが住む6万5000平方キロのタウンがあったそうだ。尾っぽがしろっぽいオジロプレーリードッグは、西部の山中に生息し、大きなタウンを作らず、広大な範囲に分散する。
このプレーリードッグ、かわいい容姿に似つかわしくない、狂暴な一面もある。
オス同士は、肛門の臭腺から臭いを発し威嚇しあう。相手がひるまない場合、死闘、挙句の果てに、相手を生き埋めにすることもあるという。オスもメスも、他のコテリーの子供を埋めたり、殺したり、平気で行う。全ては、縄張り、コロニー生存のためだ。
なお、プレーリードッグは全種、冬になると体の脂肪を消費しながら、巣穴の中でじっとしている。オグロプレーリードッグは、暖かい日には巣穴の外でエサを食べることもあるが、オジロプレーリードッグは、山中の草原地帯で、6カ月間冬眠して過ごす。
そんなプレーリードッグであるが、現在、その生息数は激減した。プレーリードッグの故郷、北アメリカのグレートプレーンの大部分が農場や牧草地になったことがきっかけだ。破壊的な巣穴を作るプレーリードッグは、人間にとっての厄介者となり、プレーリードッグの98%が捕殺され、生息地はかつての5%にまで減少したのだ。メキシコプレーリードッグ、ユタプレーリードッグに関しては、もはや、絶滅危惧種になってしまった。
もともとは森林だった地を農牧地にすることで、もともと住んでいた動物達が住処を失なう。過去50年で、生物多様性は68%減少してしまった。また、世界の森林面積はいまや30%程度まで減少した。人間の開発による森林破壊は、動物同志の弱肉強食の戦いとは違い、不自然な動物の激減を招く。森林破壊が今以上増え続けないよう、人間が歯止めしないと、生物多様性はさらに減少する。
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