アフガニスタンを統治しているイスラム主義組織「タリバン」が7月4日、美容院を閉鎖する命令を出した。この命令は、女性に対する抑圧である。タリバンは、2021年8月に政権を握って以来、女性の自由を段階的に縮小してきた。タリバンは、国際的な批判を無視し、女性を公の場から排除する政策を推進し続けているのだ。
美容院の閉鎖は、1996~2001年、タリバンがアフガニスタンを支配していた際に導入されていた施策の一部であったが、2001年アメリカ主導のアフガニスタン侵攻以後、美容院は営業を再開していた。美容院の経営は女性にとってビジネスチャンス、収入源となるため、美容院の数は急増した。しかし、2021年8月にタリバンが再び権力を握った後、日本の中学・高校に当たる女子の教育が停止され、公園、スポーツクラブ、遊園地への女性の立ち入りが禁止された。さらに、女性が外出する際には、目だけが出るヒジャブやブルカの着用を義務付け、国連やNPOへの勤務は禁止、政府機関で働いてた多数の女性は、解雇か自宅待機になった。また、屋外で女性が72キロメートル以上移動する際には、男性の親族の付き添いが必須となった。
今回の美容室の閉鎖命令は、2001年のアフガニスタン侵攻前の禁止令の復活だ。
美容院は再び閉鎖され、店舗のウィンドウは覆われ、外に描かれた女性のイメージも顔を隠すようにペンキを塗られた。
タリバンは、「イスラム法(シャリーア)の範囲内で、女性の権利を尊重する」と主張しているが、実際には、イスラム法で、女性が美容院に行くことを明示的に禁じているわけではない。美容院閉鎖にショックを受けた女性から、「タリバンは女性から最も基本的な人権を奪っている」という声も上がっている。
今回、美容院が、タリバンの抑圧のやり玉にされたのは、美容院が、女性同士で集まって情報交換する唯一安全な社交場であるからだ。生活圏を極端に制限され、籠の鳥状態にある女性達が、籠の外の情報を得たり、籠の中の情報を籠の外に暴露することができる唯一のおしゃべりの場が美容院であった。
日本において男女の格差問題がなくなったわけでは決してない。しかし、アフガンの女性の生活と比較すると、私たちはいかに自由であるか思い知らされる。教育を奪われ、行動範囲を狭められ、職の選択肢を奪われ、言論の自由を奪われたアフガンの女性達が自立した生活を獲得することはますます困難になった。
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