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一人の少年が考えた善意の連鎖「ペイ・フォワード 可能の王国」
あらすじ
「ペイ・フォワード 可能の王国」(原題:Pay It Forward)は、キャサリン・ライアン・ハイドの小説を原作とした映画。ラスベガスに住む中学1年生の少年、トレバーが、思いついた「世界を変えるためのアイデア」が、予期せぬ形で広がっていく様子を描いたヒューマンドラマである。ある日、社会科の最初の授業で、シモネット先生が、生徒たちに、「もし君たちが世界を変えたいと思ったら、何をする? そのアイデアを考え、実行に移しなさい」といった課題を出します。多くの生徒がありきたりな提案をする中、トレバーは「ペイ・フォワード(次へ渡そう)」という独自のシステムを提案する。
ペイ・フォワードは、自分が3人の人に、相手が自分では解決できないような大きな親切をする。親切を受けた人は、そのお返しを自分(トレバー)にするのではなく、「別の3人の人」へ親切を渡す。これを繰り返すことで、善意がねずみ算式に増え、世界中に広がっていくというアイデア。トレバーは早速この計画を実行に移していく。まずは、ホームレスの男性ジェリーに食事と寝る場所を提供する。次に、アルコール依存症で悩む母親アーリーンと、顔に火傷の跡があり心を閉ざしているシモネット先生の仲を取り持ち、二人を救おうとする。そして、いじめられている友人を助けようとする。しかし、現実は厳しく、裏切られたり、失敗したりと、トレバーは「やっぱり世界なんて変わらないのではないか」と挫折感を味わう。
しかし、一方で、トレバーの知らないところで奇跡は起きていた。彼が助けたホームレスの男性が別の女性を助け、そのバトンが次々と渡り、遠く離れたロサンゼルスまで届いていったのである。あるジャーナリストがこの「親切の連鎖」の噂を聞きつけ、その発端であるトレバーの元へ取材に訪れる。テレビのインタビューを受け、トレバーの活動は一躍有名になる。
しかしその矢先、トレバーはいじめられている友人を助けようと勇気を出して仲裁に入り、その際に不運にもナイフで刺されて命を落としてしまう。以前だったら、いじめっこが怖いから、あきらめていたトレバーだが、テレビのインタビューの後で、諦めたら負けだと自分で自分に言い聞かせていた矢先、その気持ちが、行動を起こし、結果、悲劇を生んでしまうわけだが、トレバーの行動は大きな影響力となって広がっていく。トレバーがなくなり、悲しみに暮れる母親と先生。しかし、家の外を見ると、そこにはキャンドルを持った無数の人々が集まっていた。トレバーの始めた「ペイ・フォワード」によって救われた人々、そしてその意志に賛同した人々が、彼を追悼するために集まってきたのだ。
この物語のテーマは善意の連鎖。恩返し(Pay Back)だと当事者通しで恩をやりとりしてそこで恩は終わってしまうが、一人が3つの「恩送り(Pay Forward)」をすることで、恩が広がり、自分では解決できないような大きな課題が解決され、救われる人が無限に広がっていく。
主人公トレバー役のハーレイ・ジョエル・オスメントのウルウル目の威力、ハーレイの深い悲しみの表情は本当に素晴らしい。
主人公トレバー・マッキニーが残した名言
1. 変化への恐れについて
物語の終盤、インタビューで「なぜ皆ペイ・フォワードをしないのか」と問われた時の言葉
「世の中をクソだと思っている人は多いけど、慣れてるから変えようとしない。諦めているからだ。でも、諦めたら負けなんだ。」(I think some people are too scared, or something. I guess it’s hard for people who are so used to things the way they are - even if they’re bad - to change. 'Cause they kind of give up. And when they do, everybody kind of loses.)
2. ペイ・フォワードの真髄について
黒板の前でクラスメイトに自分のアイデアを説明する時のセリフ。
「見返りは求めない。次へ渡すんだ。」(You don't pay it back. You pay it forward.)
3. 行動することの難しさについて
自分には実行するのが難しすぎると感じた時の、素直で重い言葉。
「世界なんて変わらないよ。……だって、自分のことしか考えてないんだから。」
逆説的に「自分のこと以外(他者)を考えること」が世界を変える鍵であることを示唆。
4. 人を助けることへの覚悟
「人助けって勇気がいるんだ。相手が何を望んでいるか、本当によく観察しなきゃいけないから。」
単なる親切心ではなく、相手の立場に立って「本当に必要なこと」を見極める難しさと大切さを語っている。




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