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【movie73】家族愛があふれる涙腺崩壊映画「Coda コーダあいのうた」
「Coda コーダあいのうた」は、2021年に公開されたアメリカ・フランス・カナダのカミング・オブ・エイジ・コメディドラマ映画。監督・脚本はシアン・ヘダーで、2014年のフランス映画「エール!」の英語リメイク作品。爽快で胸熱な感動作として、多くの観客から高い評価を得ている。「エール!」は酪農一家で、主人公の兄弟は弟、「Coda コーダあいのうた」は、漁師一家で主人公の兄弟は兄、そして、「Coda コーダあいのうた」の方が、主人公の恋愛描写が多いといった違いはあるが、話の骨子はだいたい同じ。
タイトルに含まれている「コーダ(CODA ; Children of Deaf Adults)」とは、聴覚に障害のある親を持つ、聞こえる子どものことを意味する。
マサチューセッツ州の海辺町に暮らす主人公のルビー・ロッシは、聴覚障害者の両親と兄と暮らす高校生でコーダ。ルビーの父と兄は漁師だ。ルビーは、早朝、船に乗り、漁師の仕事を手伝うのが日課だった。
新学期、ルビーは合唱クラブに入る。恋心をいただいいるクラスメイトのマイルズが合唱クラブに入ったからだ。ルビーは耳が聞えない家族の前では、思いっきり歌えるのに、他人の前で歌うことには恥じらいがあった。
ルビーの才能の扉を開けたのは、合唱クラブの顧問ヴィラロボス先生。先生は、ルビーの類まれな歌唱力を評価し、ルビーに、パリの名門音楽大学バークリーの受験を勧めた。
一方でロッシ家。漁港で政府が漁師から魚を安値で買い取る話が浮上、政府の買い値に反感を持った父と兄は、漁業組合を立ち上げ、自分達で魚を販売することにした。組合設立に伴い会話の機会が増えた家族にとっては、ルビーの通訳が頼りだった。ルビーは、歌のレッスンと家の手伝いとの両立に悩み葛藤する。そして、家族に、音楽大学に進学したくて歌のレッスンを受けていることを打ち明けた。ところが、ルビーが特別の歌唱力を持っていることがわからない両親は、進学したいルビーの気持ちを理解できない。家業が一番と進学に反対する両親への反発から、ルビーは、次朝の漁の手伝いをほったらかす。その日は、監査員が乗船する日であったのに・・・。監査員は聴覚障害者のみで漁をすることを問題視。結果、父は、免許停止と罰金の処罰を受ける。父が処罰を受けたことに責任を感じたルビーは、大学進学をあきらめる。兄が、「ここにいちゃダメ、永遠に頼られてしまう。俺に任せろ、これでも兄貴だぞ、俺たちは無能じゃない、失せろ」と、ルビーを説得したにもかかわらず・・。(ここのシーン、兄の言葉(手話)は感動ポイントです)
そして、合唱クラブの集大成、コンサートの日がやってきた。耳が聞こえない家族は、赤いドレス姿のルビーの美しさには感動したものの、ルビーの歌声に感動することはできない。合唱コンサートでの最大の山場は、ルビーとマイルズのデュエット。映画の演出で驚いたのは、観客誰もが歌声に魅了される感動シーンになるはずのデュエットシーンを途中から無音にしたことである。観客をルビーの家族と同じ耳が聞こえない状況に置かせるためであろう。コンサートのハイライトとなるデュエットシーンを無音にすることで、映画の観客にも、声を聴きたいのに聴こえない家族のもどかしさを経験、共感させる演出が新鮮だ。
コンサートが終わり家に帰ってきた家族。家の前で、外で空気を吸いたいという父にルビーが寄り添う。父はルビーに、「今日歌った歌を俺のために歌ってくれるか」と語り掛ける。父はルビーの喉に指を置く。父は自分の手に伝わるルビーの喉の振動から、ルビーの歌を感じとろうとしていた。
翌朝、ルビーを起こす父。家族全員、ルビーの進学を応援すると決めたのだ。家族をのせた車はパリに向かう。ルビーが試験で歌うのは、「both sides now - by emilia jones- coda」(原曲は、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)の「Both Sides Now(青春の光と影))。伴走者は曲を知らなかった。楽譜なしでは伴奏できない伴走者に変わり、伴奏するのは、会場にかけつけたベルナルド先生、先生の機転が功を奏し、ルビーの萎縮した心は解放される。ルビーのソプラノのさわやかでやわらかくのびやかな歌声は、曲のメロディにぴったり。そして、2階席に座っている家族に気づいたルビーは、歌の途中から、歌に手話をのせて、家族に歌いかける。そう、「Coda コーダあいのうた」は、コーダが歌う、家族に捧げる愛の歌。耳が聞こえない家族のためだけに手話に歌詞をのせて愛を届ける歌なのだ。この歌唱シーンは涙腺崩壊必須である。私は、このシーンで目頭がじゅわーと熱くなり、涙が自然と溢れ止まらなくなった。同じシーンを巻き戻して何度もみたが、その都度、必ず、泣けた。ルビーの歌、手話、表情が、私の心の奥に眠る熱いものをこみあげさせるのだ。これが本物の感動なのか。家族全員が自分の幸せより家族の幸せを願って生きている。その日常が走馬灯のように思い出され、感動が爆発しそうになる。
ルビーを演じたのはエミリア・ジョーンズ。聴覚障害者の家族役にはオスカー女優のマーリー・マトリンやトロイ・コッツァーなど聴覚障害者の俳優たちが起用された。家族は耳が聞こえなくても前向きで明るい。そのことがこの映画をさわやかにさせている。映画は、サンダンス映画祭で史上最多4冠に輝き、世界を沸かせた。AppleTV+が配給権をサンダンス映画祭史上最高額約26億円で落札、2022年の第94回アカデミー賞では作品賞を含む主要3部門を受賞した。
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